2025.07.10
25歳、突然社長になった日 その3
ー日光コラムvol.60ー

こんにちは日光コラムです。今回も日光コラムを読んでいただきありがとうございます。
※こちらは連載「25歳、突然社長になった日」、「25歳、突然社長になった日 その2」に続き、
今回が最終話です。
これから承継に向き合う方、
すでに継いで日々奮闘されている経営者の方へ。
共感とヒントのある内容です。
私は30歳のときに決めた「3つのこと」があります。
・安売りしない、品質の日光ブランドの維持
・印刷機を導入しない
・経営の勉強をする
3つ目の【経営の勉強をする】についてお伝えします。
藁をもすがる思いで“ 経営者セミナー ”にいく
こんな会社にしたいとおぼろげに思っている社長は、世の中にいっぱいいらっしゃると思います。
私もそうでした。しかし、何をして良いかわからない。さらに、経営者は判断することが大切と言われても、何を根拠にどのように判断して良いかわからない。これまではどのようにしていたのか、当社の場合であれば、それは創業者の頭の中にすべてあったわけです。
経営とは何か、何が必要なのか、一度学ぶ必要があると感じ、私は勉強に行きました。
“ 知識”の必要性
知識がなければ、結局進められないと痛感したことをお話しします。
セミナーでは、管理会計について学ぶ機会がありました。
当時、当社では月次決算を実施しておらず、日々の業績を体系的に把握する仕組みが整っていませんでした。創業者がご存命だった頃は、毎日受注額を確認し、頭の中でおおよその月商や粗利を把握されていたのではないかと、今振り返って推察しています。私自身は「P/L(損益計算書)」という言葉すら知らず、日々の数字の重要性や、それをどう把握・分析し、経営に活かすかについて全く理解していませんでした。
そこで、セミナーで得た知識を実務に活かしたいと考え、当時の管理(総務)部長に月次決算の作成を依頼しました。しかし、セミナーで学んだ通りには進まず、実際の運用には多くの課題がありました。
当社ではすべての業務をアナログで処理していたため、リアルタイムで数字を確認することが困難でした。管理部長から「そんなに早くは出せません」と言われても、「できるだけ早くお願いします」と頼むのが精一杯でした。
たとえば、リアルタイムで月次決算を確認したいのであれば、自社の状況を踏まえ、必要な課題を一つひとつ解決していく必要があります(詳細は割愛します)。「管理部長が説明すればよいのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそも理解がない状態では、説明すること自体が非常に難しいのです。
知識は一つひとつ積み上げていくことで、ようやく理解に至るものだと、今では強く感じています。
管理の仕事であるにもかかわらず、なぜ私が営業に対して「早く売上処理をしてください」と催促しなければならないのか。なぜ業者さんに「○日までに請求書を提出してください」と連絡しなければならないのか。さらに、なぜ急に「手書きではなく販売管理システムが必要です」と言い出すのか。
こうしたことを管理部門が他部署に説明もなく一方的に要求すれば、「勝手なことばかり言っている」と受け取られかねません。そうした未来を、当時の管理部長は見通していたのでしょう。
結果として、「余計なことは言わず、言われたことだけをやっておく方が穏便」という空気が社内に生まれ、そうした会社の文化が出来上がっていったのです。
背景を理解している社長であれば、まずその土台を整えた上で、「いつまでに月次の集計を出してね」と管理部門に依頼します。そして、期限までに出せなければ、それは管理の怠慢だという評価になるわけです。しかし、当時の私のように背景を理解していない社長は、「なぜうちの月次決算はこんなに遅いのか。管理部門の怠慢だろう」と感情的に責めてしまうことになるのです。
“ 理念 ”の必要性
物事を知識として、知っていると経営ができると言われれば、これもまた違うと考えます。風土や人間関係は知識で育まれるものではなく、会社の考えや価値観をもとに構築されていくものであると考えます。会社をやっていく上で、判断軸となる価値観こそが理念であると考えます。
P/Lの営業利益さえ今期上がれば、経常利益さえ三年間増えていけば、何をやったって良いという考えの元、経営をするのは、可能かもしれません。いわゆる短期的な考えでいけば運営できるかもしれません。しかし、10年、20年という継続性を考えた時、それでは絶対に上手くいかないと考えます。
良くたとえ話で出ますが、10年継続する会社は全体の何パーセントなんて話があります。起業して、10年経つことの難しさが、単なる利益追求ではない何かが必要であると言う間接的な証明になると思います。
その理念を、社員のみなさんと共有する、社長が言葉として、他の何かで共有、浸透していくことが必要であると私が実感したのが、評価制度の構築を通じてでした。評価制度とは、一年間の社員のみなさんを評価して賞与を出す金額を決めるものだと思っている人は多いと思います。もちろんその側面を持ち合わせていることを私は今も否定しません。しかし、評価制度の目的とは、どんな社員になってほしいか、なってほしい姿を実現するためのものです。成長のための支援制度であると考えます。
成長して、どんな社員に社長さんはなってほしいですかと聞かれたら、会社の風土や歴史、社長の価値観、社の雰囲気などを言語化、可視化する必要に迫られたのです。
こういう会社にしたいから、こういう社員さんになってもらいたい。
礼儀を重んじ、来られたお客さんが明るい気持ちになる会社にしたいから、お客さんが来たら、元気に挨拶するような会社になって、みんな大きな声であいさつする社員さんになってもらいたい。なので当社の経営理念は、「礼を重んじ、凡事を徹底する」評価制度の行動評価の一番目の項目は挨拶ができているかどうかにする。と言った具合です。
これは本当に、私は10年くらいかけて、自分自身に重要性が浸透していったイメージです。40前後の時に、墨田区の経営塾や、大阪府の経営塾に通い、本当に時間がかかりましたが、その重要性を理解していきました。なぜ理念が必要なのか、どうして共有するのか。企業が継続していくためには、全体指針となる価値観は欠かせないと気付き始めました。
とまぁ、えらそうに書いていますが、出来ていたら良いんですが、まだまだ道半ばですが、突然跡を継いでから、右往左往、行ったり来たりを繰り返してここまで、本当に周囲の方、社員のみんなのおかげで、20数年社長をやらせてきていただきました。これを読んで何かの参考になった方が一人でもおられたら幸いです。
まとめ
私は社長の仕事は、指針や方向性を決める事、それに基づいて、数値を情報として生かしながら判断をすること、そのために勉強することだと思います。
私は尊敬する社長さんが周囲にいらっしゃいます。自分ではあの人の様になれない、あまりにもキャラが違う、性格が違う、知識が違う、行動力も行動量も違うとします。だから自分はそのままで良いわけではなく、じゃあ自分なりに何をするのか、それを考え続けるのが社長の仕事ではないかと思います。